物流2024年問題の要素の一つに人手不足が挙げられます。

なぜ人手不足になるか? というと、ドライバーの待遇に問題があるからです。

「昔はよかった、働けば働いた分だけ稼ぐことができた」

しかし現在は過重労働を許してはくれません。なぜなら、すべての労働者の過重労働を防ぐため2019年から施行された働き方改革があるからです。

 

事の発端は2009年ごろ。過労自殺を引き起こす過重労働の実態が社会問題として広まりました。ブラック企業という言葉もこの頃に知られるようになりました。

運送業では、旅客の事故ですが、過重労働を原因に関越道バス事故が起こっています。これは当時で過去最悪規模の死傷者を出した事故ですが、その後に軽井沢スキーバス事故が起こり、事故の最悪規模を更新しています。

 

このように働き方改革は10年の歳月をかけてようやく施行された経緯があります。

運送業と建設業、そして医師は5年の猶予が与えられていましたが、2024年4月にとうとう猶予期間が終わります。

ですので「稼ぎたい奴だけは稼ぎたい分、働いたっていいじゃないか!」という気持ちは理解できるのですが、もう社会はそのような働き方は許してくれないのです。

 

ドライバーの目に映る物流2024年問題

ドライバーは稼ぐために働いています。これは真理です。

昔ほど稼げなくなったということは待遇が悪くなったと言えるでしょう。

また同じ給料で働くなら、労働時間が伸びることも待遇が悪くなったと言えるでしょう。

どうして待遇が悪くなるのか・良くならないのか、雇用主からどんな説明を受けたところで雇われの身からすればすべて言い訳に映ります。

「お金が出せないなら時間を返せ」

待遇改善ができない果ては、結局この理屈に行き当たります。

 

待遇を改善するためには何はともあれ、給料を増やす必要があります。

では給料の増額原資はどこから確保できるでしょうか? それは運賃・料金の値上げしかありません。

これが難しいことは重々承知です。

運賃・料金には当然、運送原価としてドライバーの人件費が含まれており、給料を上げるなら人件費上昇分を運賃・料金に転嫁する必要があります。

つまり運送事業者には頑張って価格転嫁・価格交渉の成功を収めることが急務の課題になります。

 

「お前の替わりはいくらでもいる」は本当か

最近、このフレーズの向きが逆になってきたと感じます。

雇い主が雇われ人に向かって投げつけていた言葉ですが、今は

「この程度の待遇の職場の替わりなんていくらでもある」

と、雇われ人から雇い主に向けられる言葉になっているような気がしてなりません。

つまり「お前の下では働けない」と三行半を突き付けられる状況になってきている気がします。

 

さて、本当に替わりはいくらでもいるのか? 客観的なデータで知っておく必要があります。

ちなみに2030年問題という話しもあります。2030年頃にはドライバーが年齢を理由にリタイアが始まり、業界を去ってしまうという不可逆的な人手不足問題のことを指します。

ただ退職するだけなら復帰はあるかもしれない。でも70歳を超えると身体の衰えは避けられないため、いままでどおりに働けなくなることは予測可能な事項です。

 

警察庁は毎年、運転免許統計を公表しています。最新は令和4年度版です。

この統計から、運転免許取得者数を見れば補充人員候補者数を予測できます。

貨物運送に必要な大型と中型の数字を拾います。

次に5年後の適齢診断を受ける必要がある65歳で区切って、65歳以上と65歳未満の割合を出します。つまりこの表で言うところの60歳で区切ります。

結果、5年後に65歳以上になるのは免許取得者全体のうち、およそ4割前後

65歳未満は、およそ6割前後

になります。

 

いかがでしょうか。これが5年後に訪れる事実です。

繰り返しますが、5年後の65歳未満つまり現在60歳未満は全取得者割合で6割前後です。

もちろんこれは取得者を表しているので、現在運送業に従事しているとは限りません。

けれど、運送業に同じ割合で在籍しているとして、

5年後にはドライバーの4割が引退する年齢に掛かっている事実に危機感を持つべきです。

 

自社で免許を取らせるなら話は変わってきますが、中途採用は残りの6割から採用しなければ、長く居てもらうことは難しくなります。

このことから、ドライバーの獲得競争は今後厳しいものになっていくことが分かります。

そして、ドライバーに長く居てもらうためには待遇改善、事業成績の改善は喫緊の課題となっています。

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