一般貨物事業者の年に一度の定例事務は事業報告書と事業実績報告書の提出があります。
一般貨物の営業許可申請の過程で役員法令試験がありますが、事業報告書と事業実績報告書は頻出問題になっています。「いつまでに提出しなければならないか?」が問われる出題が多いですね。
役員法令試験は「運送事業者として知っておかなければならないこと」が出題されるので、知らなかったとは言い訳できません。
この記事では事業報告書についての記述です。
事業報告書とは?
事業報告書とは、事業年度が終了した日から100日以内に提出する報告書です。毎事業年度行うものなので定例事務でもあります。
報告書の内容は一般貨物自動車運送事業部門の決算報告になります。
もし他に営業業務があれば─例えば建設業や産業廃棄物業、葬祭業─事業者全体の決算内容から一般貨物自動車運送事業部門だけを抽出したものを記載することになります。
普段の帳簿記帳の注意点
このため経費帳簿類は、それぞれの営業部門ごとにまとめておくと作成が楽になります。
というのも一般貨物専業であれば決算書の内容をそのまま転記すればよいわけですが、建設業許可、産業廃棄物関連の許可を取得していればそちらもそれぞれの業種ごと監督官庁に「建設業分野の決算報告」「産業廃棄物系の決算報告」を提出しなければならないからです。
事業報告書を提出しなかったら?
事業報告書を提出しなかった場合の影響は、①巡回指導でチェックを受ける。 ②事業計画の変更ができなくなる。 ということが考えられます。
運輸局が積極的に提出を促してくるような話は聞いたことがありません。けれど事業報告書が未提出かどうか、運輸局はしっかり把握しています。
事業報告書は3部提出するものです。1通は運輸局、1通は管轄運輸支局、1通は提出者控えです。そのため未提出の状態は運輸局も把握しており、その証拠に一般貨物事業者の情報公開請求を行ったときの開示情報には「事業報告書の提出有無欄」がしっかりあります。
巡回指導等で発覚し、事業報告書を提出するよう言われたときは未提出事業年度について可能な限り提出するよう言われるので、忘れずに毎年提出しましょう。
巡回指導がくるのは毎年とは
外部委託をするときの注意点
税理士さんに会計記帳をお任せしている事業者さまは多いと思いますが、記帳を外部にお任せしている場合は許認可上の報告書制度について説明しておくとよいでしょう。
税理士先生にとって税務申告で必要になる情報は事業者全体の売上から確定申告するだけなので、ここで業種ごとに分けることは意味のないことです。
しかし許認可を受けている業種が監督官庁に提出する決算報告は税務申告とはまったく別の話になるので、お任せされた方はこのことを存じていないかもしれません。また運送業の制度をご存じでなく運賃と料金の違いが分かっていなかったり、利用貨物の登録もしていないのに運送料について外注費を計上してしまうかもしれません。依頼するときはこういう説明ができないといけません。
おそらく別メニュー扱いになるかもしれませんが、複数業種を経営していると按分も考えなくてはならないので一度自社でやってみてコストパフォーマンスを考えてみるとよいでしょう。
自社で行う時の注意点
自社で行う場合は簿記の知識がある程度必要になります。ある程度の科目勘定の意味が分からないと表の記載ができないからです。また、運送業の制度もわかっていないと正しく書けないこともあるでしょう。
一般貨物の売上とは運送料と付随作業料金になります。利用貨物の許認可を受けている場合は経費に外注費が計上できます(逆に利用貨物の許認可を受けていないと外注費は制度上不自然です)。運送部分の人件費などの記載欄もあり、「これってどれをどれくらい按分していいの?」となってしまうことはほぼ起きます。
100日って意外と少ない
事業年度の決算が確定するまで1~2カ月くらいかかるでしょうから、それだけで100日の期間うち1/3~1/2ぐらいを決算書に費やすと思います。これを同時進行に進めていくのか、決算書から按分・抽出して作成するのか手順は分かれそうです。
少なくとも事業報告書には決算書の貸借対照表・損益計算書を添付できるので、決算書の完成は待ってから事業報告書を作成する方が多いのではないでしょうか。となると、事業報告書の作成期間は実質2か月~1ヶ月程度しかないことになります。
この短くなった期間で事業報告書を作成する必要があります。作成を外部に依頼するのであれば、これらの事情に詳しいところへご依頼する方がよいでしょう。
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